2017年11月17日制定
2024年2月12日改訂
(設立趣意書より)
「本会は、人々の経験や実践に関心を向け、それを捉え直すことを目指した研究に取り組んでいます。たとえば、日常的に行っている援助やケアと呼ばれる実践、教育に関わる実践、あるいは、病や何らかの困難を抱えつつ生活する 人々の経験などが相当します。これらの実践や経験には、その当事者でさえはっきり自覚していない事柄が内包されており、既存の理論や概念を用いて説明することには限界があります。そのため私たちは、一旦既存の理論や概念を棚上げし、事象そのものへと立ち返ることを要請する現象学を手がかりに、諸経験や実践の成り立ちにアプローチすることを試みてきました。
本会では主に、研究方法の検討や、現象学を手がかりとした記述的研究などの発表を受け、参加者の皆様とともにじっくり議論を行っています。この議論を通して、発表者は現象学的記述を洗練させ、同時に、参加者の各自が自身の 見方や枠組み、実践の仕方を捉え直し、事象を探究するための視点を養います。」
研究者は研究活動の遂行において倫理的な態度が必要である。
本学会が多様な領域からの研究に開かれた場であるために必要な研究者の倫理的な態度や配慮について規定を策定することになった。
本会会員は、人々の経験や実践に関心を向け、 それを捉え直すことを目指す研究者あるいは、研究者であり実践者でもある者として以下に定める倫理規定を遵守する。
研究者としての社会的責任
会員は、研究活動が良識に対する社会の信頼と負託の上に成り立つことを認識し、臨床実践とその研究に努めると共に、実践や研究の成果に関して責任を有する。また、研究活動においては常に公衆の安全、健康、福祉を最優先させる。
研究対象者の保護
会員は、研究対象者の人権、人格を尊重し、安全、福利、個人情報の保護等に配慮する。
公平性の確保
会員は、人種、性、年齢、地位、所属、思想・宗教などによって個人を差別せず、個人の人権と人格を尊重する。また、個人の自由を尊重し、公平に対応する。
研究者としての研鑽と向上
会員は、能力と人格の向上に継続的に努める。自らの知識を、豊かな持続的社会の実現に最大限に活用し、臨床実践の探求やその研究を通じて研究者としての品位、信頼および尊敬を維持向上させることに努める。
公正な活動
会員は、立案、計画、申請、実施、検証、報告などのすべての実践や研究の過程において、真実に基づき、公正であることを重視し、誠実に行動する.各データの記録保存や厳正な取扱いを徹底し、ねつ造、改ざん、盗用などの不正行為をなさず、加担しない.また、特定の権威・組織・利益によらない中立的・客観的な立場から討議し、責任をもって結論を導き、実行する。
法令の遵守
会員は、臨床実践やその研究活動の遂行に際して、社会規範、法令および関係規則を遵守する。
契約・守秘義務の遵守
会員は、それぞれの専門職務上、あるいは職務上知りえた情報の機密保持の義務を負う。
利益相反の開示
会員は、利益相反がある場合には、説明責任と公明性を重視して、利益相反についての情報を開示する。
会員相互の協力と尊重
会員は、他者と互いの能力の向上に向けて協力し、研究上の批判には謙虚に耳を傾け、真摯な態度で討論すると共に、他者の知的成果などの業績を正当に評価する。
i. 人を対象とする実践報告・研究計画・研究結果等を本学会の学術大会および学会誌で発表する場合、機関に所属する実践者・研究者は、原則各所属機関の規則に従い、あらかじめその実践報告・研究について倫理審査委員会に諮り、倫理審査を受けなくてはならない。本学会には倫理審査委員会はない。
ii. 現在研究機関に所属しない研究者で、専門職者のうち職能団体や所属する専門領域に研究倫理委員会がある場合、また過去に所属していた施設で得られたデータを扱う場合は、その所属施設や団体の倫理審査委員会に諮り、審査結果を受けなければならない。
iii. 現在および過去においても組織団体・施設に所属せず、人を対象とする実践報告や研究を、本学会および研究会で発表をしようとする研究者は、倫理的配慮について、2. A) または2. B) の手続きを経て対象者の理解と同意を得なければならない。
iv. 発表に際しては倫理委員会への付議とその審査結果について資料に明記しなければならない。研究機関に所属しないものは倫理的配慮の詳細を発表資料に明記しなければならない。
研究者は原則、研究対象者となるべき者に対して、あらかじめ少なくとも以下の A) (1) ~ (12) について説明し、十分な理解を得た上で、研究協力の同意を得なければならない。研究者は、参加者等が自由意思によって同意または不同意を判断することができるよう、配慮しなければならない。参加者等が断れない状況、あるいは理解が不十分な状況で研究協力を依頼していないか留意し、そうした状況が疑われる場合は配慮をしなければならない。
研究参加者本人からインフォームド・コンセントを得られる場合は、下記の (1) ~ (12) を事前に説明し同意を得なければならない。
(1) 研究への参加は任意であること。
(2) 研究への参加に同意しない、あるいは同意した後に拒否をした場合でも不利益を受けないこと。
(3) 実践・研究中は常に参加や拒否の意思を表明できること、同意はいつでも撤回できること。
(4) 参加者に選定された理由。
(5) 当該研究の意義、目的および方法、研究計画が終了するまでの期間ならびに参加者等が協力を要する期間、頻度および1回の協力に要する時間、研究者の氏名および職名。
(6) 当該研究に参加することによる、研究参加者自身にとっての利益ならびに起こりうる危害、不快な状態およびそれらへの対応について。
(7) 参加者等を特定できないよう配慮した上で、研究の成果が公表される可能性があること。
(8) 当該研究の資金源、起こり得る利害の衝突および研究者と関連組織との関わり。
(9) 得られたデータの内、個人が特定される情報について、誰が、何を、どのように加工するのか(しないのなら、その根拠)。またそのデータは、誰に、どこで、どのようにして目に触れるのか。データの保管および使用の方法ならびに保管期間。参加拒否したあとのデータの取り扱いについて。
(10) 当該研究についての問い合わせ先および苦情等の窓口の連絡先。
(11) 事前に倫理審査委員会からの承認を受け、所属機関の長から許可を得ている旨。
(12) その他必要な事項。
研究参加者等が同意能力を欠く場合等、インフォームド・コンセントを得ることが困難であるときは、前項の A) の (1) ~ (12) の規定を遵守したうえで、「代諾者」のインフォームド・コンセントを得ることにより、参加者が研究に参加する意思があることとみなす。この場合において、代諾者となるべき者は、参加者と良好な関係にある、適正な判断力を有するなど、参加者の最善の利益を図り得る者でなくてはならない。
研究責任者は、対象者となるべき者が研究者に対して不利な立場にある場合には、自由意思によって同意または不同意を決めることができるよう、配慮をしなければならない。
発表に際しては参加者の意向なく個人が特定されることのないよう、例えば参加者とその家族や関係者等にデータや分析結果、公表内容を確認依頼する等、秘匿性の確保につとめなければならない。
本発表が、既に他学会(誌)等で発表済あるいは演題登録中の抄録と実質的に同じ内容の発表の場合、二重発表とみなされ、当学会では発表することができない。二重発表の可能性がある場合、事前に本学会に申告し本学会の指示に従わなければならない。
倫理的配慮と研究発表の責任は発表する研究者にあるが、本学会は倫理規定にもとづき、十分な倫理的配慮がなされた発表であることを確認しなければならない。事前に倫理的配慮やその記載が不十分であると判断した場合、本学会での発表を中止しなければならない。研究者はこの決定に従わなければならない。
以上